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鉄学概論 第10回~第12回

2007年から2014年まで皆様にお届けしたNYKNewsから、ご好評いただいたコラム溢水口の連載”鉄学概論”をご紹介いたします。

鉄学概論 第10回:秘境駅の魅力を知る

鉄学概論が半年ぶりに帰ってきました。
その間、「電車が見える部屋」プランを打ち出すホテルあり、社会人向けに鉄道講座を開講する大学ありと、鉄道ブームは上昇中!
一億総鉄化も近い!

NYKNews Vol.17(2010年1月掲載) 写真:野岩鉄道―男鹿高原駅

 

幾多の路線が廃線に追い込まれる中、奇跡的に生き残ったいわば宝とも言える駅がある。
人里はなれた深い山中に、往く人とていない海岸に、忘れ去られたようにひっそりとそれらは存在している。それが秘境駅である。
「秘境駅」の命名者であり、秘境駅巡りの第一人者である〝乗り鉄? 牛山隆信氏のウェブサイト「秘境駅へ行こう!」は、氏が自らの足で集めた秘境駅の情報が満載である。秘境駅の可笑しくも哀しい、それでいてどこか厳かな佇まい…、そんな不思議空間を垣間見ることが出来る。是非一度アクセスされたい。
中でも室蘭本線・小幌駅のレポートは秀逸。断崖絶壁に囲まれ徒歩では辿り着けない、肝心の列車も普通列車でさえ通過してしまう。駅周辺に人家はおろか、何の施設もない、要するに「何もない」、まさに〝秘境? である。
どうして駅があるのかわからない。

 

しかしこの「何もない」ことこそが秘境駅の魅力なのである。物と情報に溢れかえったこの現代社会において、これほどの贅沢があるだろうか?「何もない」静かな場所に身を寄せてみよう。究極のリラクゼーションがそこにある。
秘境駅の魅力を知るとは、とりもなおさず、秘境駅へ行くということである。とは言え、小幌駅のような本格的秘境駅はある程度の装備と知識が必要で、初心者には敷居が高い。
 次に紹介するのは、初心者でも比較的容易にアクセスできる秘境駅。経験こそ万事の教師!
ぜひトライしていただきたい。
□いすみ鉄道―久我原駅※1
周囲には一面荒地が広がり、人家は一軒見えるだけ…。大変辺鄙な場所のようだが、実は首都圏からほど近い千葉県にある。房総半島内陸部の林の中に隠れるように、ひっそりと存在している。
□野岩鉄道―男鹿高原駅
これまた「どうしてあるのかわからない」駅である。この駅までの乗車券購入時、駅員をして「えっ!?男鹿高原ですか?何も無いですよ?」と言わしめた駅である。文句なしの秘境駅であるが、東武浅草駅から直通一本、本数も一時間に一本程度はあるので、首都圏から気軽に出かけられる。誰も乗らない。誰も降りない。誰もいない。駅周辺には謎のヘリポートと変電所があるだけ…。熊が出そうでちょっと怖い。駅の待合室が心強い。(A)

 

※1 2009.7.1命名権売却により「三育学院大学 久我原」に駅名変更されている(2012年3月末まで)

鉄学概論 第11回:「栄光のスカ色」

とうとう投入された…!
ダイヤ改正により209系が京浜東北線を退役、あろうことか内房・外房線へ配転!
房総の顔である「113系-スカ色」全廃のカウントダウンが始まった…。

NYKNews Vol.19(2010年5月掲載)

 

「房総の顔」とは言うが、「スカ」とは横須賀のこと。つまり、「スカ色」とは「横須賀色」の略、横須賀線車両の外装色のことである。
横須賀線は、明治時代、軍港都市である横須賀との連絡のため建設された、軍事的重要路線であった。現在は、東海道本線と並ぶ、首都圏神奈川方面の、主要通勤路線である。
では、なぜ房総の顔なのか?

 

高度経済成長期、国鉄は、首都圏通勤時の混雑を解消するべく、東海道本線・横須賀線、中央本線、東北本線・高崎線、常磐線、総武本線、これら都心から5方向に延びる主要路線の複々線化など、国電の輸送力増強を計画、断行した。いわゆる「通勤五方面作戦」である。
これを機に、横須賀線と総武線快速の相互直通運転(久里浜?千葉間)が開始され、「スカ色」が千葉でも見られるようになった。
使用された車両は、近郊型113系。103系と共に高度経済成長を支えてきた名車であり、総武線沿線で育った筆者としては、非常に思い入れの強い車両でもある。
時速90?100km時の抵抗制御モーターの走行音は勇ましく、時折香るモーターが焼ける様なニオイが芳しい。非冷房車であれば天井に数台設けられた味のある扇風機、初期のグリーン車に設置されたバッタンコシート※1、灰皿を固定する四ヶ所のネジ穴…、〝鉄?の琴線にふれる要素がいっぱいだった。そして、何といっても山や海、花々など、どんな景色にもマッチする外装…。絵になる列車だった。
栄光の「113系-スカ色」。現在、久里浜?千葉間ではその勇姿を見ることは出来ない。
千葉以遠の内房・外房線で第二の人生を送っている。「房総の顔」として。

 

そんな車両とも後1年でお別れである。
後に控えるのは「俗物」、改装リニューアルされた209系。リニューアルたって、座席は過去の〝異物?、硬くて痛いロングシートのまま。それはつまり、房総の美しい海に背を向けて乗車する、ということである。
高速道路の休日割引など、自家用車優遇の政策がとられ、鉄道・バス・船舶などの乗客減が報じられる中、なぜこんな改装を?だれも乗らないよ?鉄道を楽しめる装備がまったくないじゃん!仙石線205系の様に、一部の車両にデュアルシート※2を採用するなど、工夫の余地は十分にあったはず。…残念である。(A)

 

※1 リクライニングにストッパーが無いため、体を起こすたびに「バッターン」という大きな音とともに背もたれが元に戻る。
※2 ロング・クロスの両方に転換可能な座席

鉄学概論 第12回:山手線トリビア

JR小海線のハイブリッド車両『キハE200形』が、環境負荷低減効果を評価され、「2010年国際交通フォーラム」で「推薦賞」を受賞したそうです。
お尻への負荷も低減して欲しい…。
今回は、一番身近な路線でありながら、謎も多い山手線の小話を…。

NYKNews Vol.23(2011年1月掲載) 写真:小海線・佐久広瀬駅

 

山手線とは…、などとは書くまい。
それほど有名な通勤電車-うぐいす色の憎いヤツ-であるが、重箱の隅をつつくと、全く役にはたたないが、朝礼のネタにはなるかもしれない話もある。というわけで、今回は山手線トリビアを紹介したい。

 

①他の混雑路線より列車間隔が長い
超過密路線である山手線は通勤ラッシュ時は1時間に25本、2分20秒間隔で運行されているが、実はこれでも他の混雑路線と比較すると少ない方なのである。私鉄の時刻表を見ると、2分を切って運転している時間帯もあり1時間30本体制の所もある。JRとしても増発したいのが本音ではないかと思うが、線路容量の限界に達しているため現状難しい。

 

②レアな時刻表
山手線の時刻表は4年前のダイヤ改正から始発の4時?6時、終電23時?25時しか記載されていない。通勤時間帯以外でもひっきりなしにくるので不要と言えば不要である。が、実は駅ホームをじっくり探してみると、出口階段付近・柱・関係者以外立ち入り禁止のドアなどに、白黒でA4紙サイズぐらいの時刻表が発見出来る。業務用ダイヤである。よく見るとそのダイヤ、なんと秒単位まで記載されているのだ。

 

③京浜東北線より速い
山手線と京浜東北線は品川?田端間で同じ区間を併走する。仮に同時に発車した場合、次の駅で先にドアが開くのは山手線である。
理由は「起動加速度」にある。これは停止状態からの加速性能の指標で、1秒あたり時速何㎞加速していくかを示している。山手線の起動加速度は3.0km/h/s。時速60㎞に達するまで20秒ということになる。一方、京浜東北線の起動加速度は2.5km/h/s。時速60㎞に達するまで24秒かかるのである。
しかし、これはあくまで理論上の話である。実際に運行してみるとそう単純なものではない。
各電車がいつもベストなスペックで走るとは限らないし、前方に列車が近づいていれば加速できない。速度制限だってある。
そもそも、列車は運行ダイヤを守って運転しており、スピード競争をしているわけではない。先行する京浜東北線を見て「行け! 差せ!」なんて思っている筆者は、少し反省…。(A)

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鉄学概論 第13回~第15回はこちらをご覧ください。

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