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第10回 山旅あれこれ(那須、東北南部の山)

今回は、那須~常陸~東北南部の山々を紹介する。

筑波山

NYKNews Vol.28(2011年11月掲載)

 

▲筑波山(876m)
奈良時代初期の〝常陸風土記〟に「雪の富士、紫の筑波」と昔から歌われ、信仰の対象とされてきた。深田久弥曰く、〝1000mに満たない低山でありながら日本百名山に選んだのは、歴史の古さから〟。関東平野から望む双耳峰は名山に相応しい。

 

▲那須岳(1917m)
広大な裾野を広げる那須連峰は、最高峰の茶臼岳と朝日岳、三本槍岳などからなる。茶臼岳は今でも噴煙をあげる活火山で、一帯に豊かな温泉を湧出させ、湯元の高級ホテルから三斗小屋のような素朴なランプの宿もあり、温泉につかって山旅が楽しめる。

 

▲会津駒ケ岳(2132m)
駒ケ岳と名のつく山は多いが土地の名をつけて区別している。残雪の山全体が天馬の疾駆する様に似ていることからこの名が付いた。と深田久弥は言っている。
桧枝岐から急な樹林帯を登り湿原に出ると、山頂には雲上の楽園と呼ぶに相応しい広大な湿原が広がっている。

 

▲磐梯山(1819m)
明治の大爆発で一変して裏磐梯が著名な観光地に変ったように、この山は表と裏から見るのとでは山容があまりにも違う。表の猪苗代湖から仰ぐ雄大な姿に比べ、裏は広い高原地帯に可憐な池沼が点在しそれらの水面に磐梯山が逆さに映る風景は絵葉書を飾っている。

 

▲安達太良山(1700m)
万葉集にも出てくるこの山は、乳首山とも言われ鉄山、箕輪山、鬼面山など変化に富んだ峰を連ねる火山群で、二本松から眺めた安達太良山を歌った高村光太郎の「知恵子抄」で有名になった。鉄山の山腹に立つ〝くろがね小屋〟は温泉付きの山小屋として人気がある。

 

▲吾妻山(2024m)
山形県と福島県の両県にまたがり、ゆるやかな起伏のある2000m前後の山々を連ねる広大な吾妻山群の最高峰が西吾妻山である。広い湿原とオオシラビソの森、湖沼、渓谷など変化に富み、今ではドライブウェイが通り観光地化されてにぎわいをみせている。

 

▲飯豊山(2128m)
東北では鳥海山に次ぐ高さで、飯豊連峰は山形・福島・新潟の3県にまたがる大きな山塊である。真夏でも山腹に残雪を見ることができ、この残雪は麓に住む農民の農事暦の目安とされ信仰の対象とされてきた。山上の湖沼、お花畑など景勝地が多い。

 

▲蔵王山(1841m)
エメラルドグリーンの水をたたえたお釜が有名で、最高峰の熊野岳を中心にした一連の山脈の総称である。昔から信仰の山であり山名も蔵王権現からきている。多くの人は蔵王の雪景色をよく知っているが、夏の蔵王も楽しく熊野岳から名号峰付近にかけては静かな山旅が楽しめる。

 

*参考文献
 日本百名山:深田久弥、(株)新潮社 昭和39年発行   
 日本百名山・登山ガイド:(株)山と渓谷社 '92年9月10日初版第1刷

第11回 山旅あれこれ(東北の山)

今回は、東北の山々を紹介する。

岩手山八合目

NYKNews Vol.29(2012年1月掲載)

 

▲朝日岳(1870m)
穏やかな山並みが山形県と新潟県にまたがって連なり、東北の山には珍しく宗教色は無いが、歴史のある魅力を秘めている。ピンク色のエゾスカシユリの咲くシーズンは登山者で賑わう。登山口の一つ古寺鉱泉の赤土色の鉱泉とネマガリダケの味噌汁の味が忘れられない。

 

▲月山(1980m)
松尾芭蕉の句にも詠まれ、みちのくでは羽黒山、湯殿山と共に出羽三山の修験道の霊山として知られる。初夏から盛夏にかけてクロユリ、コバイケイソウ、ハクサンフウロなどおなじみの高山植物でおおわれるなだらかな稜線は春や夏スキーのメッカとして人気がある。

 

▲鳥海山(2240m)
日本海へ延びる裾野は秋田県と山形県にまたがり、山頂の大物忌神社は昔から人々の信仰の対象であった。固有種のチョウカイフスマなどの咲くお花畑や湖沼、雪渓など変化に富んだその優美な山岳風景は魅力ある東北の霊峰の風格を備えている。

 

▲早池峰山(1914m)
〝遠野物語〟にしばしば語られ、山岳信仰の霊場として敬われてきた。日本のエーデルワイスと言われるハヤチネウスユキソウやナンブトラノオなど、高山植物の宝庫であり、早池峰固有の植物が登山者を楽しませてくれる。奥深い北上高地の最高峰である。

 

▲岩手山(2041m)
岩手県のシンボル的存在で、南部富士とも呼ばれる。東側はなだらかな曲線を描くが、西側は山陵が延び、山間にはシラネアオイなどの美しいお花畑や湖沼がある。山頂付近は荒涼とした火山地形で、噴火口の中に更に火口丘があり二重式火山となった変化に富んだ地形が楽しめる。

 

▲八幡平(1614m)
三角点のある山頂は際立ったものではなく、広い台地状で変化に乏しいが、山頂付近の八幡沼周辺はアオモリトドマツなど北方独得の深い樹林や湖畔の湿原と澄んだ水面がうまく調和した景観は美しい。素朴な山のいで湯と湿原散策が楽しめる。

 

▲八甲田山(1584m)
青森歩兵連隊の雪中行軍の遭難でその名が知られるようになった。いくつもの峰々を連ねた総称であり、最高峰の大岳のある北八甲田はお花畑や湿原、雪渓、樹林帯など変化のある景観が楽しめる。山頂からは岩木山、八幡平、岩手山など東北北部の山並みが一望でき、酸ヶ湯温泉へ下れば湯治の湯で遊べる。

 

▲岩木山(1625m)
津軽富士とも呼ばれ、津軽平野の中心に位置する。昔から山岳信仰が盛んで山頂神社奥宮への登路が多く開かれている。鳥海山と並びコニーデ型(円錐形)火山で古くから火山活動の記録が残り、多くの文学作品にも登場し人々に親しまれてきた。八合目まではスカイラインが通り手軽に登れる。

 

*参考文献
 日本百名山:深田久弥、(株)新潮社 昭和39年発行   
 日本百名山・登山ガイド:(株)山と渓谷社 '92年9月10日初版第1刷

第12回 山旅あれこれ(北海道の山)

日本百名山の紹介も今回で最終回になり、北海道の山々を紹介する。

幌尻山荘

NYKNews Vol.30(2012年3月掲載)

 

▲後方羊蹄山(1893m)
蝦夷富士とも呼ばれ美しいコニーデ型の死火山である。アイヌ語でマッカリヌプリ、山を回るように流れる川があり、川の名と山からその名がついたと言われている。山頂付近と倶知安コース沿いの植物は天然記念物に指定されている。

 

▲幌尻岳(2052m)
日高山脈の最高峰で山腹に三つのカールを抱える。日本百名山の中で最も登り難いと言われるのは、アプローチのぬか額びらかわ平川での繰り返しの渡渉をしないと登山口に辿り着けないためである。川幅は広くないが雨が降ると急に水嵩が増し、渡渉を断念せざるを得なくなる。夏は山頂付近の野生のブルーベリーなど高山植物が多く楽しい山歩きができる。

 

▲十勝岳(2077m)
大雪山国立公園の十勝連峰の最高峰で、活火山であり北海道で3番目に高い。美瑛から山麓の白金温泉を経て噴火口下まで登山バスが通り、頂上まで気軽に登ることができるようになったが、登山の前には火山活動の情報に注意しなければならない。

 

▲トムラウシ(2141m)
大雪山国立公園のほぼ中央にあり北海道で二番目に高く、岩石を積み上げたような山頂の周囲には湿原や池沼が点在し天上の楽園を思わせる。トムラウシ温泉からの日帰りの登山中に岩場で出会ったナキウサギの愛らしい姿と独得の鳴き声が忘れられない。

 

▲大雪山(2290m)
高原台地に連なる標高二千m級の山の総称でその最高峰が旭岳である。高山植物の宝庫であり北海道の屋根と言われる。この山塊の東の黒岳と西の旭岳の山腹にロープウェイが架けられてからは容易に縦走ができるようになった。熊出没注意の看板が各所にある。

 

▲阿寒岳(1503m)
マリモと啄木の歌碑で有名な阿寒湖を挟んで、急峻で原生林におおわれた雄阿寒岳と噴煙を上げ荒々しい地肌を見せる雌阿寒岳が対峙している。雄阿寒は眺めて立派であるが雌阿寒はなだらかで登りやすく、阿寒岳は標高の高い雌阿寒岳を言う。

 

▲斜里岳(1545m)
知床半島の付け根にある死火山。大きく尾根を張った山で原住のアイヌ人が〝大山〟と呼んで神の如く崇拝したと伝えられており、昭和10年に山頂に社が設けられた。北海道の他の山と同様に登山の歴史は新しく昭和初期のスキー登山が最初とされている。

 

▲羅臼岳(1661m)
オホーツク海に突き出た知床半島の連山の最高峰で、山頂からの展望の半分は海で国後島が手に取るように見え、地の果てに来た感が味わえる。羅臼はアイヌ語で〝動物の内臓が沢山ある場所〟の意で、狩猟の後にここに葬ったためにその名がついたと言われている。

 

▲利尻岳(1718m)
日本最北端に位置し、稚内からのフェリーからはまさに利尻島全体が利尻山で海上の美しい山である。コニーデ型の死火山で岩を混ぜた鋭い稜線が続き荒々しい山容を見せ、歩きにくい砂礫を登ると山頂近くで可憐な固有種のリシリヒナゲシが迎えてくれる。

 

2年間に亘り百座の山を紹介したが、ポイントだけの紹介であり本当の良さは自ら登り、その良さを味わっていただきたい。長い間ご愛読ありがとうございました。

 

*参考文献
 日本百名山:深田久弥、(株)新潮社 昭和39年発行
 日本百名山・登山ガイド:(株)山と渓谷社 '92年9月10日初版第1刷

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