シリーズ 災害 | 第4回 活断層
災害に関するお話をしています、このコーナー。
今回は地震の主原因となる活断層についてです。
NYKNews Vol.4(2007年11月掲載)
最近数十万年の間に、繰り返し地震を起こし、今後もその可能性がある断層をいいます。
地盤は、同じような間隔で断層活動をしたり、破壊したりします。この時地震が起きることから、繰返し断層活動が認められると、その断層は将来も同じような間隔で運動を起こし地震を発生させると推定されるので、活断層と呼ばれています。
全ての断層が活断層ではなく、以前動いていた断層が今は動きを止めてしまった断層もあります。
国は、全国にある活断層のうち、その活動により社会的・経済的に影響の大きな100近くを選んで調査を実施しています。活断層は地表に残された地震活動の痕跡であり、いつ頃、どの程度の規模の地震がどの位の間隔で発生する可能性があるかを調査するもので、地震の発生する源を明らかにすることが調査の目的です。
「地震調査研究推進本部地震調査委員会」(文部科学省)では、1996年(平成8年)以降、日本周辺の断層帯を評価し、過去の活動などを基にして予測した将来の地震発生確率(長期評価)を発表しています。
日本の活断層分布図では、中部地方から近畿地方にかけて、活断層が多く分布しています。地表に断層が出現するような内陸型直下地震は圧倒的に中部以西に多く発生しているといえます。
(参考文献:「耐震総合安全性指針2007」耐震総合安全機構、2007年、41頁
「考え方・進め方 建築耐震・設備耐震」オーム社,平成19年,12~13頁)
第5回 長周期地震と短周期地震
同じ震度であっても現れる被害に違いがあります。いろいろな要素が考えられますが、その一つ、「周期」について。
NYKNews Vol.5(2008年1月掲載)
地震時の揺れの1往復にかかる時間を周期といい、建物の最も揺れやすい周期を固有周期といいます。建物により長さは異なり、建物の被害はその建物の固有周期によることは知られています。地震の加速度の波形により長周期(4秒前後)か短周期(1秒前後以下)かを判別できます。
長周期地震は人が感じにくくゆっくりした揺れで遠くまであまり弱まらずに伝わり、巨大地震に多く、関東・名古屋・大阪の大都市圏のような軟らかな "堆積層"で増幅し長く続きます。
兵庫県南部地震で木造住宅などが被害を受けた場合と違い、超高層ビル(建築基準法上は60m以上)など大きなビルが影響を受けやすいといわれています。典型的な例として、1984年の長野県西部地震で、震源から約200km離れた新宿の超高層ビルでは、屋上が周期5秒、振幅15cmと大きく揺れエレベーターのケーブルが共振により切断したり絡んだりした事故が起きました。
この時、東京は震度3で、他に被害はありませんでしたが、多くの超高層ビルのエレベーターは同じような被害を受けました。
建物に被害が発生するのは1~2秒の周期の地震動といわれています。
2004年の中越地震で建物の被害が少なかったのは、周期が1秒より小さい短周期地震動が要因といわれています(図参照)。
固有周期が短い場合は揺れが烈しく、長い場合はゆっくりと揺れます。建物が建っている地盤により、建物の受ける加速度は変ってきますが、軟弱地盤では増幅作用により建物の固有周期に近くなると、共振し被害を大きくする恐れがあります。
免震装置は固有周期を長くして建物の被害を低減する技術です。
概略の固有周期は、10階建てで1.2秒程度、20階建てで2.4秒前後、30階建てで3.6秒前後といわれています。
(参考文献:「耐震総合安全性指針2007」耐震総合安全機構、2007年、41頁
「考え方・進め方 建築耐震・設備耐震」オーム社,平成19年,18~19頁)
第6回 液状化現象
新潟地震では鉄筋コンクリートの団地が転倒したり、新潟空港では滑走路が水没したりしました。液状化現象が原因と言われています。
NYKNews Vol.6(2008年3月掲載)
砂と水のある環境で発生する現象で、1964年6月の新潟地震時に注目されるようになりました。
港湾地帯や大きな河川の河口近く、砂丘の内陸側、湖沼の周辺低地等が液状化の発生しやすい地帯ですが、近年、沼や湿地を埋めたてて造成された新興住宅地に集中しているといえます。重い建物は沈み、軽い下水道等のマンホールや共同溝が浮き上がったり、漁港では地盤沈下も発生しています。
液状化現象は、そろった緩い砂質土と高い地下水位の地盤で起きます。通常は砂どうしの互いの支持力により建物などを支えていますが、地震動により地盤が揺れると、砂どうしの支持力が瞬時にくずれ、砂粒は泥水のような状態になり水と共に液体のように流動することになります(図.参照)。
これが液状化現象であり、砂まじりの水を大量に噴出する噴砂現象も発生します。
新潟地震以外でも日本海中部地震(1983年)、釧路沖地震(1993年)、能登半島沖地震、北海道南西沖地震など多くの地震で液状化による災害が多く発生しています。
日本海中部地震では、秋田市や能代市で沼や湿地を埋め立てた宅地での被害が見られ、1995年の兵庫県南部地震では、神戸市の人工島であるポートアイランドで、大規模な液状化現象による大量の噴砂があり洪水のようになりました。
海外の地震でも1989年のロマプリータ地震(サンフランシスコ)では、海を埋め立てて造成された地域で液状化による被害が拡大しています。
本来の自然環境である海岸、沼、川などを人間の手によって都合のよい人工のものに改変した結果であると言えます。
(参考文献:「考え方・進め方 建築耐震・設備耐震」オーム社,平成19年,14頁)
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