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鉄学概論 第7回~第9回

2007年から2014年まで皆様にお届けしたNYKNewsから、ご好評いただいたコラム溢水口の連載”鉄学概論”をご紹介いたします。

鉄学概論 第7回 18ユーザー(キッパー)

高崎~小田原間をつなぐ湘南新宿ライン。ささいなトラブルですぐ運休になるため、鉄は通称「小心軟弱ライン」と呼んでいるそうです。
今回は鉄に最も愛されている切符について…。

NYKNews Vol.10(2008年11月掲載)

写真:JR上越線・土合駅:関東の駅百選、日本一のモグラ駅

 

「青春18切符」。JRが発行する特別企画乗車券のひとつである。特別企画乗車券とは、赤字、とくにローカル線の乗客減に悩む旧国鉄※1が考え出した切符で「トクトク切符」と呼ばれるものである。
民営化されて約20年たち、東海や東日本あたりはこの切符をやめたいようだが、人気が高く売上がばかにならないのと、売上が何らかの計算式によりJR6社で按分されており、経営の苦しい九州・四国・北海道にとってはその収入が貴重である、という事情もあり今日まで存続している。

 

さて「青春18切符」、1枚で1日有効×5回分で11,500円。名前から誤解されがちだが、年齢制限は無い。乗り降り自由。普通・快速はJR全線フリーではあるが、新幹線・特急は乗れない。東京-仙台、-新潟を例に見ると新幹線は2時間程度だが鈍行は7時間とワープ※2しない限り3倍以上掛かってしまう。
だが往復約20,000円が2,300円※3と、価格面からみればこれほど素晴しい切符は無い。
途中下車して1km程度歩くだけでも今まで知らなかったことが分かったり、秘境駅へ行き「家もない・自販も無い・改札も無い・屋根も無い・あるのは板だけ」ということを知ることだって出来る。
そんな浪漫あふれる旅を18切符だけで行く者を、18ユーザー、18キッパーと呼ぶ。

 

キッパーは18切符をフル活用、つまり、始発から終電までを駆使し、出来るだけ遠くへ行こうと考える。よって時刻表の事細かなチェックは欠かせない。ダイヤは新幹線・特急のスムーズな接続を第一に組まれている。
結果、「普通客のことなんて考えて無いだろ!」ってぐらい普通列車同士の接続が悪い。到着2分前で乗り換えの電車が行ってしまいハイ!2時間待ち…なんていうのは当たり前である。しかし、そこでくじけてはいけない!キッパーたる者、あらゆる可能性を時刻表
で模索し、時には路線バスまでをも視野に含め最良の接続を見つけ出すべし!なおかつ「この時間の列車は2両のロングシートで嫌だから、1回見送って3両のクロスで行こう」など、車両条件にもこだわりたい(ここが素人さんと違うところである)。
最高の接続を見つけ、ピタリと決めた時の達成感、これがキッパーの醍醐味である。
第一、JRのキッパー排斥的な帝国主義的ダイヤに屈してなるものか!
これぞキッパー魂ってもんである。(A)

 

※1 日本国有鉄道
※2 特定区間だけ数千円の身銭を切って新幹線などで ショートカットすること。ワープを使いこなせば、 18切符で行ける区間・乗り継ぎがぐんと有利にる。
※3 1回分のみ使用、つまり日帰り旅行の場合。

鉄学概論 第8回:時鉄とは

過去の時刻表(2003-12月版)に、青春18切符の宣伝広告が…。
「冒険が足りないと、いい大人になれないよ」…じゃ、冒険が足りなくなるダイヤ改正はやめてください。

NYKNews Vol.11(2009年1月掲載)

 

時鉄とは、平たく言えば列車の時刻(発着時間・所要時間・通過待ち時間)、運賃料金等に特化した鉄のことである。時鉄を語る上で欠かせないアイテムが時刻表である。
日本初の時刻表は、1894年10月5日(のちに時刻表記念日)発行の「汽車汽船旅行案内」である。多種多様の時刻表が発行されたが、現在は交通新聞社「JR時刻表」とJTBパブリッシング「JTB時刻表」この2誌のみである。

 

時刻表は本来、旅行計画時等に発着時刻を確認するためのものだが、時鉄の利用目的はそれにとどまらない。例えば…。
①夢の旅をする※1
時刻表を見て水上8:18発の上越線に乗って長岡→新津→新潟→…と時刻をなぞっているだけで既に頭の中は白銀の世界へ…。
②ダイヤグラムを推測する
時刻表とは「スジ屋」※2が作成したダイヤグラムから各駅の停・発車時刻を抜き出したものである。このダイヤグラムを時刻表から逆に推測・作成し、スジ屋の苦労を楽しむのである。スジの傾きが大きくなれば速度UP・小さくなれば低速運転といったことが理解出来る※3。
③特急の通過待ち時間を確認する
列車の行き違い箇所・追い抜き箇所などを発見したり、この駅で特急の通過待ちをする為何分停車するということが理解できる。
④ダイヤ変更の調査
毎月変わる微妙なダイヤ変更を調べ、本数の増減・他の路線への乗り換えに支障をきたさないかを確認する。さらに列車の編成表を作成して、車両形式と車両数を確認する。ただし、これは時刻表には載っていない。現地に赴き1車両1車両確認する他は無い。

 

すでにお解りと思うが、生きてく上で全く役にたたない作業である。また、黙々と調べ上げる作業は、音鉄・撮鉄と比べても華がない。それでも鉄道の運行状況を勉強することが出来るし、完全に調べ上げた時の爽快感はたまらない。また、地道な作業を積み重ねて得られる情報は、乗鉄・撮鉄・録鉄、等の鉄活動の上でも重要である。
携帯版の時刻表も出ているが、鉄たるもの、大判の時刻表を持っていくのが常識である。
寸分の狂いもない完璧な計画による旅行中、万が一ダイヤが乱れた際、行程を立て直すためには、情報量が多い大型時刻表でないと対応出来ないからである。
駅で寝る時の枕にもなるし…。(A)

 

※1 一般的に「妄想鉄」と言う。
※2 ダイヤ(グラム)を組む人。ダイヤは縦軸に時刻、横軸に駅名を取るグラフで、列車は斜めの線で表記される。この斜線を"スジ"と呼ぶため。
※3 ダイヤ上で列車の速度を上げることを"スジを起こす"列車の速度を落とすことを"スジを寝かす"という。

鉄学概論 第9回:ムーンライト

東京発の定期運行の夜行列車が全滅!というダイヤ改正が断行されました。
恐れていたことが現実に…(T_T)。
というわけで今回は緊急特別講義です。

NYKNews Vol.12(2009年3月掲載) 写真:ムーンライトえちご@大宮駅

 

ムーンライト(以降ML)とは、JR各社が運行する夜行快速の愛称である。
始まりは、国鉄時代、夜行高速バスに対抗するため、新宿~新潟駅間で試験運行された団体快速列車、後のMLえちごである。
他に、MLながら※1、ML仙台、ML信州、ML九州、等が全国で運行された。しかし、高速バスとの価格競争で及ばず利用客は減少、また、春・夏・冬の18シーズン中に利用客が集中するなど、時期による乗客率の上下が激しいことも災いし、次々と撤退もしくは、臨時運用化へと追い込まれた。そして最後の砦 "ながら"と"えちご"も、今回のダイヤ改正で臨時運用となり、夜行快速の定期運用は絶滅、まさに憂うべき事態となった。

 

通常ブルトレ(寝台特急)は、乗車券+特急券+寝台券で2~3万円かかるのだが、MLは全車指定の快速列車なので、乗車券+指定席券だけでよい。つまり18切符を使えば2800円※2で乗車できる。しかも、快速列車でありながら、183・373系の特急車両を使用、座り心地がよく疲労も少ない。よって、寝台ではないが充分"1泊"を計算できる。
以上のことから、東京―鹿児島往復、1都11県大回りの旅、などの大掛かりな格安旅行を計画したいキッパーにとり、必要不可欠な列車であることがご理解頂けると思う。現在の所、18シーズン中は臨時運用されるらしいので一安心であるが…。

 

最後に、ML利用上の注意点を…。
①18切符利用時
MLの多くは23時頃の発車。したがって、出発して1時間もしないうちに日付をまたぐことになる。つまり、たった1時間で18切符1回分を使ってしまうのである。もったいない。よって、到着時間が0時を超える最初の停車駅(下りMLながらの場合は小田原)までは別途乗車券を買うべし!
②利用期間
コミケ※3開催期間のMLは、別名「コミケ列車」と呼ばれている。コミケの行き帰りに利用するオタクたちに専有されるからである。この車内では、コスプレパーティーや、交換会、即売会などが行なわれるといい、アニソンを大声で歌う者もいるとか…。一般客にとっては迷惑この上ないのだが、なにせ「コミケ列車」である。コミケマニアでほぼ満杯なので一般客は無抵抗。安眠は望めない、コミケに興味がなければ絶対に避けるべし!(A)

 

※1 前身は伝説の夜行列車「大垣夜行」。 全席自由席。東京発大垣行のためこう呼ばれた。
※2 2300円(18切符1回分)+指定席券500円
※3 同人誌即売会「コミックマーケット」の略。世界最大のオタクの祭典である

鉄学概論 第10回~第12回

鉄学概論 第10回~第12回はこちらをご覧ください。

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