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水の話 第4回 銭湯とざくろ口

NYKNews Vol.16(2009年11月掲載) 写真:高千穂峡

 

 銭湯は記録に残っているのは、江戸時代のはじめ1591年(天正19年)江戸橋付近にできたのが最初といわれている。徳川家康が江戸入りした翌年で、その後17世紀初頭(慶長年間の終わり)に広まったようである。
当時の風呂は、現在のように浴槽になみなみと湯を張ったものではなく、蒸し風呂の一種で、浴槽の底に膝を浸す程度に湯を入れ、下半身をひたし上半身は湯の蒸気であたたまる〝蒸気風呂〟。
浴室の出入口に引き違い戸を設け湯気の逃げるのを防いでいたが、開閉が頻繁になると湯気が逃げてしまうので工夫されたのが〝 石榴口〟である。
「ざくろ口」は、江戸時代の言葉遊びの一つで、当時は鏡を磨くのに石榴の実を絞った酢を使っていた。風呂に入るのに屈んではいる(屈み入る)ので〝 鏡鋳る〟としゃれ、〝ざくろ口〟となった、と言われている。(図参照)
全国浴場組合加盟の銭湯は2005年には約5200件あったが、2008年3月末には1100余件まで激減し、都内でも週に1軒の割合で廃業している。高度成長期以後、風呂付住宅が一般的になり、最近の〝スーパー銭湯〟が各所にオープンしているのも激減の大きな原因となっており、銭湯での〝寄席〟や〝ロックコンサート〟等のイベントを企画し、客寄せに必死である。
日本人の多くは風呂好きであり、毎日のようにたっぷり湯をはった浴槽に肩までどっぷり浸かって一日の疲れをとる。日本の文化と言えばそれまでであるが、考えてみれば贅沢な話である。一方で、最近の健康ブームでトレーニングジム通いの人が増え、内風呂を使うよりジムの風呂や開放感のあるスーパー銭湯(スパ)などで済ます人がいて、内風呂を使わない家庭もある。
一時、温泉施設や老人ホームなどでのレジオネラ症、家庭用24時間風呂、有名温泉施設での温泉成分の偽りなど、日常我々が開放感に浸れリラックスするための施設もいろいろ問題を含み、注意しなければならないようである。
日常の生活でも最近は、エコ給湯、太陽熱利用の発電・給湯、風呂の水の再利用など省エネ、節水が行なわれつつあるが、世界的な水不足が言われる中で、日本はまだまだ恵まれており、世界で上水30㍑/人・日以下の国は左表の通りである。前にも述べたが日本独特の地形や季節による厳しい水事情があり、日常の生活でも水の大切さを再認識する必要がある。

 

参考文献:入浴の解体新書 松平 誠 1997年第一刷り 小学館発行
〝油断大敵より「水」断大敵〟               
橋本総業株式会社主催(H19.8)建築設備セミナーテキスト

第5回 山で入れる温泉

NYKNews Vol.17(2010年1月掲載) 写真:雪の宝川温泉 群馬県)

 

山の好きな人は登山だけが楽しみではなく、山の魅力は日本百名山のような著名な山に登ること以外に花やバードウオッチング、スケッチや写真、釣り、森林浴、地元の温泉や名物を楽しむ人などさまざまである。旅行会社の山旅ツアーは、国内ではアルプスの縦走から日帰り登山まで一年中企画されており、温泉に入るのを売り物にしているものもあるが、辺鄙なところではなく、日帰り温泉的なところが多い。
山に登って温泉に入る、こんな贅沢はない。山では風呂に入れないのが常識であり、まして標高の高い露天風呂に入ろうと思ったら狙いをつけていくしかない。登山者だけが入れる温泉・露天風呂は全国探しても数は少なく、左表は代表的な高所にある温泉である。
山の中に限らず温泉の呼び方も様々で、〝秘湯〟〝鉱泉・温泉〟〝野天風呂・露天風呂・野湯〟などといわれるが少し整理してみたいと思う。
〝秘湯〟とは:山奥などで交通の便が悪く簡単に行けない場所にある温泉を言うことが多い。戦後の高度成長期以降温泉宿が社員旅行の一つのパターンになり俗化し、本来の温泉の良さをなくしたため、温泉ファンは喧騒から離れた温泉へ行くようになり〝秘湯〟と言われるようになった。民間の〝日本秘湯を守る会〟の基準では、宿が申請して加盟するものなのでこの会の温泉が全てではない。
〝温泉・鉱泉〟の違い:一般的には沸かさずに入れるものが温泉、それ以外は鉱泉と理解されているようだが、温泉法によると、温泉とは〝地中から湧出する25℃以上の温水又は、法で定める19の物質のうち、いずれか一つを含む鉱水・水蒸気・ガスをいう〟とある。鉱泉は冷たい湧き水と思われがちだが、〝鉱泉分析指針〟(環境庁)では、〝温水と鉱水の泉水〟とあり、温かい鉱泉もありうるので、両者の違いは水蒸気やガスを含むか含まないかというだけでこだわることもないようである。
〝露天風呂・野天風呂・野湯〟の違い:露天風呂は外に面している。旅館などに付属してちゃんとした施設のある風呂。屋根が無く空が見える。野天風呂は屋根や壁がない(岩尾別温泉 北海道)。最低限の施設がある。自然溢れる風呂。川原に沸きっぱなしで管理されていない風呂(尻焼温泉 群馬県)。野天の上を行くのが〝野湯〟で脱衣場さえない天然温泉(カムイワッカの滝 北海道)をいう。いずれにしても違いはどうであれ自分流に楽しめばよいのであり、皆さんはどのように定義されますか。
※( )内は代表的な温泉の例。

 

参考文献:知っておきたい温泉の基礎知識:あれこれパート(1)      
N.A.コンサルタント 安藤紀雄

第6回 続・山で入れる温泉

NYKNews Vol.18(2010年3月掲載) 写真:徳蔵院 松戸

 

前号では特に山の高所にある温泉について述べたが、日本百名山を登って印象に残った温泉、主に北日本のいくつかについて紹介する。
■トムラウシ山とトムラウシ温泉
「日本百名山」の著者、深田久弥は、美瑛富士からみると荒々しい岩峰を牛の角のようにもたげたダイナミックな山と称し、威厳があって超俗のおもむきがある、と著している。トムラウシ温泉(東大雪莊)から約12時間かけて日帰りで往復するのが最短コースで夏のシーズンでも雪渓があり、多くの高山植物や運がよければナキウサギにも会える。
トムラウシ温泉には内湯とミストサウナに熱めとぬるめの露天風呂がある。掛け流しで透明感がありすべすべしている。トムラウシ登山の帰りには是非泊まりたい温泉である。
■大朝日岳と古寺鉱泉(左写真)
深田は、大朝日岳を八ヶ岳の赤岳に例え、朝日連峰の端にひときわ高く立っているピラミッド形をしていると著している。山形県では飯豊山とならぶ名峰といわれ、古寺鉱泉はその登山口の一つ。雪渓が残る7月下旬はブナの原生林やピンクのヒメサユリが咲く中を大朝日岳まで往復7時間の行程である。
古寺鉱泉・朝陽館は一軒宿で自家発電が止まった後はランプの宿。ネマガリダケの味噌汁や岩魚の塩焼き、山菜料理が旨い。鉱泉は薪の風呂で沸かし、独特の赤土色をしている。
■安達太良山とくろがね温泉
高村光太郎の詩〝智恵子抄〟で謳われた安達太良山へは、山容のやさしさもあって8つの登山コースがある。山麓に散在する温泉群が魅力で、山頂からの帰りにくろがね温泉(安達太良山系〝鉄山(くろがね)〟の中腹にあるくろがね小屋に併設された温泉)に入ることができる。
温泉は硫黄臭で酸味があり、薄く白濁し細かい湯の花が浮いていて肌にやさしい。温泉に入ってから登山口までは一歩きしなければならないが、登山者だけが行ける天上の温泉である。
■那須岳(茶臼岳)と三斗小屋温泉
那須岳は茶臼岳を主峰とする火山群の総称で今なお噴煙あげる活火山である。天候さえ良ければロープウエイを利用して、日帰り登山と温泉を楽しめる。
三斗小屋温泉は歴史が古く、明治初頭の最盛期には5軒あったが、戊辰戦争後明治44年以降現在の大黒屋と煙草屋の2軒になった。登山者(宿泊者)しか入れない温泉であり、木造りの風呂と岩風呂に入るか、もう一軒にある露天風呂につかって無垢の自然を味わえる。

 

*参考文献:日本百名山、深田久弥、㈱新潮社 昭和39年発行

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